「お金は分けると減るが、知識は分けると増える」 AMRホームページ公開にあたって 

公益財団法人流通経済研究所
研究員 石橋 敬介

 この1年、農業者間の懇親会や情報交換会といった会合に、何度か参加させていただいた。その多くは、自治体等が主催するセミナーに講師として参加し、そのまま会合に突入するというものだ。何年も続けて開催している農業塾のOB会結成式に、講師として参加させていただいこともあった。

 このような場で私が一言求められたときに、よく紹介している言葉がある。それが本コラムのタイトルにもある「お金は分けると減るが、知識は分けると増える」というものだ。これは、マサチューセッツ工科大学で、授業映像のWeb一般公開に取り組んだチャールズ・ベスト元学長の言葉である。情報とは何か?知識とは何か?と考えるとき、非常に示唆に富んだ言葉だと思う。

 この言葉について、私は以下のように解釈している。まず、当たり前のことだが、お金は分けると減る。1000円のうち500円を人にあげると、手持ちのお金は半分になる。モノもそうで、2個あるキャベツを1個人にあげると、手元には1個しか残らない。しかし情報は違う。自分が知っている栽培技術を人に教えても、自分の知識は減少しない。むしろ教えることによって理解が深まったり、アイデアの契機になったりして、知識が増えることもあり得る。場合によっては、情報提供のお返しに相手が持っている情報を教えてもらい、自分の知識が大きく増加することもあるだろう。
 もちろん、自社の強みの源泉となるような独自情報は無料では出せないし、個人情報や取引先の情報などのように法的に他社に渡せないものもある。しかし原則として、情報はどんどん出した方が、自分の情報が増えてお得なのである。

 各地で農業者間の情報交換が行われていることは素晴らしいことであり、積極的に行ってほしい。そして農業者の方には、このような会合に参加する際に、自分の持っている知識をどんどん出してみることをお勧めする。
 さらに、我々流通経済研究所AMRプロジェクトチームとしても、このような考えのもと、情報を積極的に出していきたいと考えている。公開レポートのページに様々な情報を開示していくので、ぜひご覧いただきたい。そして興味のあるレポートがあったら、お問い合わせページなどから、研究員にお声掛けしていただければ幸いである。皆さまとの情報交換により、お互いの知識が増えることを期待している。